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今回描いた作品「松本だるま」

OPAギャラリーでの新春企画展「達磨」に参加することになりました。

これまでだるまについてほとんど知らなかったのですが、
この機会に色々とだるまについて調べてみました。
群馬の高崎市がもっとも大きな生産地で、

全国の約8割のだるまが作られているそうです。
『だるま大百科』なども読んでみて、全国津々浦々、

非常に多様なだるまの種類があることを知りました。

ある日近所の図書館にだるまのことを調べに行った時のこと、
ふと手に取った地元長野県の郷土資料をめくっていると、こんなページを見つけました。

 

「このだるまは何だろう、なんだか個性的な顔をしている!」

 

少し調べてみるとこれは「松本だるま」だということがわかりました。

ビジュアルワイド新日本風土記20 長野県 昭和63年刊(株式会社ぎょうせい)

小正月に行われる子供たちの火祭り、

三九郎(さんくろう。地域によっては「どんどやき」と呼ばれます)。
木で組んだ櫓に正月飾りやだるま、書き初めなどを飾り付け火をつけます。
子供たちは繭玉団子(柳の枝に刺した餅)を火であぶって食べ、
一年の無病息災を祈願します。
私もかつて地域の三九郎に参加していたことを思い出しました。
懐かしいこの写真を見て、松本だるまについて調べ、描くことに決めました。

明治時代盛んに作られたこの松本だるま、

現在では2件でしか作られなくなっているそうです。
1件は松本市にある「布野恵だるま店」、もう1件は安曇野市の「玄蕃稲荷神社」。
同じ松本だるまでも比べてみると、それぞれ表情や眉の形が違います。
11月末、布野恵だるま店に行きお話を伺いました。

創業明治28年(1895年)の老舗布野恵だるま店はJR松本駅から約4km東に位置します。
国宝松本城を中心につくられた城下町は風情のある街並みで、
この日はゆっくりと歩きながら工房に向かいました。

年末はだるま生産の繁忙期。お忙しい中いろいろなお話を伺いました。

松本だるまは江戸時代末期に生まれました。
この地域ではかつて養蚕が盛んで、
絹がよく取れるようにと願いを込めて作られただるまでした。

体に入った「大當」(おおあたり)の文字は、

蚕がよくとれる当たり年を表現したものです。
特徴的な眉毛と髭は蚕の形で、

橙色がかった肌の色は日焼けした農家の方を意味していると教えていただきました。
養蚕の衰退とともに一時期この松本だるまも製造を中止していたそうですが、

10年程前から当時の資料や先代の記憶を手がかりに再び誕生させたとのことです。

古い松本だるまの木型。

布野恵だるま店では一般的で馴染み深い上州だるまを中心に

様々なだるまが作られていますが、
松本だるまはそれらに比べ約20倍の時間を要するそうで

(麻を黒く染めたものが原料の毛の部分。きれいに形作るのに大変手間がかかります)、生産数は全体の数パーセントに限られています。
この日はお店にいくつかあったものの中から2つ、

表情を比較し選ばせてもらって購入しました。
すべて手作業で作られているため、少しずつ表情が異なります。
「楽をしようと思えばできますが、昔ながらの手作業で作ることを大事にしています」と

語る三代目代表・布野康介さんの言葉が胸に残りました。

ほんの数ミリの差で、表情が全然違って見えました。

布野さんに「巨大な松本だるまが近くのショッピングモールにあるよ」とお聞きし、

帰りに立ち寄りました。

「だるま茶屋」と名付けられたフードコートには、

人が入れる大きなだるまのオブジェがありました。

デザインは布野恵だるま店の松本だるまにそっくり!
残念ながら設置の際特にお話はなかったそうですが、
松本の土地で愛されているだるまなのだと感じました。

中に子供が5〜6人入って遊べます。

名古屋張子「鉢巻達磨」
DMイラストレーション・デザイン:佐々木一澄

新春企画展「達磨」
日時

 

場所
2018年1月12日(金)〜1月17日(水)

11時 ~19 時(最終日は17 時まで)

OPA gallery(HP

〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4-1-23-1F

Tel.03-5785-2646

『表参道駅』A2、A3出口より徒歩5分

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